なんてことない世界

日々の出来事や思ったことをつらつら

所詮77億分の1だけど、

こんにちは。やかんです。

 

突然ですが,私は電車の中の風景が好きです。

 

公共交通機関なのに乗客各々が,寝息を立てたり、画面をスクロールしたり、イヤホンを装着したり、英単語とにらめっこしたり、ページをめくったり、窓の外を眺めながら黄昏たり。他人がすぐそばにいるのに自分だけの空間を作り上げているわけです。そして他人の空間には決して踏み入らないという社会学用語でいう「儀礼的無関心」を貫いているわけです。

しかし私は,他人の空間に踏み入るまではしなくてもそれをまじまじと見てしまうことが多いです。年齢や職業どころか名前すら知らない赤の他人しかいないのに,その赤の他人にフォーカスをあてると一人ひとりのことがとても気になってしまいます。この人はどんな動画を見ているんだろう、この人はどこで働いているんだろう、この人はこれからどこに行って何をするんだろう、この人は普段からこまめにLINEをチェックしているんだろうか,この人は今朝何時に起きたんだろう…などなど考えてみたところで何にもならないことを色々具体的に考えてしまいます。でもなんだかそれがとてつもなく楽しいんですよね。自分からすると関係のない赤の他人だけどそれぞれに色んな事情がある。もしかしたらものすごく頭のいい人かもしれないし,誰にも負けない特技を持っている人かもしれない。そんな人が周りと同じように振る舞い,周りに普通に馴染んでいる。…かもしれない。そう考えたらなんだか面白くないですか?誰でもその他大勢だけど確かに「個」として存在しているのです。

 

また,個人だけではなく,儀礼的無関心を貫かなくてはならないところでも人と人とのかかわりを見ることもできます。若者がお年寄りに席を譲ったり、赤ちゃんに微笑みかけているおばさんを見て嬉しそうにしている母親がいたり、偶然知り合いとばったり会った人同士の会話が聞けたり、隣に背の低い女の子が立ったときにさりげなく椅子についているつかまりから手を放してつり革を掴むサラリーマンがいたり。よくある小さなことだけどそういう光景を目にするとすごくあったかい気持ちになります。

 

実際私も今日電車でとても嬉しくて心があったかくなることがあったんですよね。今朝ホームで電車を待っているときに本を読んでいました。私は本を読むとき,しおりを一番最初のページに紐だけ見えるように挟んで読む癖があります。電車が来て本を開いたまま乗り込みました。電車に乗って5分ほどしてから,しおりの紐が見えないことに気づきました。最初のページをめくってみたら、、しおりがない。落としたのかな?と思って足元を見ても落ちていなくて。朝の満員電車でしおりを探して動き回るのは周りに迷惑がかかるので動けず,もしかしたらホームにいた時点で落としていたかもしれないと不安に思いながら,結局電車を降りるまでの30分間,そのまま本を読んでいました。降りるときにしおりが車内のどこかに落ちていないか見ながら降りたのですが,結局どこにも落ちていませんでした。落としたしおりは,高校のときに友達が誕生日プレゼントにくれたもので,きれいな青空の写真がプリントされていて,汚したくないという理由からずっとフィルムをつけたままにしていました。本をよく読むようになってからずっと愛用していたお気に入りのしおりだったのでかなりショックでした。前日に同じくお気に入りの猫の形のイヤリングを片方落としてしまっていたこともあり,そのとき周りから見てもわかるくらい露骨に落ち込んでいたと思います(笑)でも電車を降りてとぼとぼ歩いていると,後ろから同い年くらいの男の人に「落としましたよ」って言われてしおりを渡されました。私はしおりを落としたことに気づいたのは電車に乗ってからすぐだったので,多分その人は私と同じ駅で電車に乗ったのかと。さらにその人は,私が立っていた近くにはいなかったので私がしおりを落としてから約30分ずっとしおりを大事に持ってくれていて,降りてから私を追いかけてくれたんだと思います。お礼を言ったらその人はすぐに行ってしまいましたが。…すごく嬉しかったですね。たかがしおり一枚ですが,私からすると友達にもらった大切な宝物です。拾って渡してくれたのが,宝物を「宝物かもしれない」と認識してもらえたような気がしたこと。先輩は転んでも誰にも声を掛けられなかったそうなのに,ちゃんと声をかけてくれる優しい人がいたこと。些細なことですがとても嬉しかった話です。そしてもう二度と落とさないようにしようと思いました(笑)

電車内で小さなドラマを見ることはよくありましたが,自分がその当事者になるとは思いませんでした。その様子を見て私みたいにほっこりしている人がいたら嬉しいなーとも思いましたね。

 

普段は名前も知らない赤の他人の言動なんて眼中にない人がほとんどだと思いますが,一度しっかり見てみてください。同じ電車に乗っている人や、通りですれ違う人や、同じ店で買い物をしている人。いつもよく見る風景だけど意識して見るときっと面白いし,普段とは違って見えますよ。またこのように観察することは,人の性格や背景を察することや想像力を高めるトレーニングにもなると思います。さらにその人たちにかかわることができればもっと楽しいし色んな気づきがあるはずです。

 

実は今日,帰りの電車でもかなり考えさせられる出来事が起きたのですが,長くなりそうなのでまた別の機会に書こうと思います。

 

ではでは。